2020年4月1日から民法が改正されます。この改正で連帯保証人制度が大きく変更されることになるのですが、賃貸契約に影響のある部分について触れてみたいと思います。
今回は、賃貸借契約における連帯保証人の責任について考えてみたいと思います。
そもそも賃貸借契約の連帯保証人ってどういうヒト?

賃貸物件に入居する際、おそらく大部分の方は連帯保証人を立てるように言われたと思います。最近は保証会社を必須にしているところも多いですが、この場合は保証会社で連帯保証人が必要だったり、保証会社と賃貸契約の連帯保証人の二本立てだったりしたと思います。
この場合の連帯保証人の立場ですが、「賃借人が家賃や更新料、退去した場合の原状回復費などを滞納した場合に賃借人に代わって支払義務を負う人(会社)」ということになります。この責任は思いのほか重く、(正当な請求ならば)請求される金額に上限はありませんでした。なかには月4万円ほどの家賃の賃貸契約の連帯保証人になったところ、滞納家賃や退去に係る裁判、強制執行にかかった費用などで数百万円を請求される事案すらあったといわれています。しかも、賃借人が夜逃げなどして連絡がつかない場合でも、管理会社(大家さん)は、賃借人を探すことなく連帯保証人に請求できます。
そう。連帯保証人は(金銭債務については)当事者と同じ責任を負うのです。
今回の法改正でどう変わったの?

今回の法改正の最大の変更点は、今まで青天井だった連帯保証人の責任に上限が出来た、と言う点です。いわゆる責任限度額・上限額(法律用語では「極度額」といいます。)の設定を義務づけ、もし設定しなければ、保証契約自体が無効になることになりました。
これは更新契約でも同じで、連帯保証人になっている方は今後、極度額の設定のある更新契約に署名押印していくことになると思われます。
このブログを投稿した時点(H30年12月)ではまだ新民法は施行されていませんが、大手保証会社などでは既に連帯保証人の極度額の設定をした契約書に切り替わっています。今のところまだ、みたことはありませんが、おそらく賃貸契約書自体も順次極度額の記載のある契約書に切り替わっていくことでしょう。
「上限額」とは具体的にどれくらいを想定すれば良い?

国土交通省のプレスリリースでは、過去の実績調査の結果が参考資料として公表がされており、実際に連帯保証人が負担した額は平均でおよそ家賃の13.2ヶ月分(最小値2ヶ月~最大値33ヶ月)となるそうです。この資料は平成9年11月から平成28年10月までの裁判例に基づく平均値です。
管理会社での実績(約59万戸を管理する管理会社120社にアンケート調査した結果)によると、概ね9.7ヶ月で家賃滞納から強制執行による明け渡しが行われ、強制執行に要した費用は約50万円だそうです。他にも家賃保証会社向けの調査による家賃価格帯ごとの損害額分布図なども開示されています。
独自に入手した資料では、連帯保証人の保証極度額は18ヶ月~24ヶ月分とするケースがあるようです。24ヶ月分というと8万円の家賃の場合で192万円ですから、実際に数字として記載されていると、ちょっとビックリしてしまいますが、上記資料の結果から見ると概ね妥当な額ではないかと思います。ただ、法律上は上限値が明示されていれば良いので契約書には「○○ヶ月分」と記載されているケースも多いと思います。
以上、今回は、民法改正による賃貸契約に係る連帯保証人への影響について書いてみました。
誰も好んで家賃を滞納したり連帯保証人に迷惑を掛けようだなんて思っていないと思いますが、生活していくうえで思わぬ「事故」はつきものです。また連帯保証人になってしまうこともあると思います。そういうときは、むやみに恐れず契約内容をよく確認して下さい。ただ、どうしても不安が残る場合は専門家(弁護士)に相談してみてください。色々アドバイスして貰えると思いますよ。